■ はじめに:糖尿病の「怖さ」は血糖値そのものではない
糖尿病は「血糖値が高いだけの病気」と思われがちですが、本当の怖さは合併症にあります。
放置やコントロール不足が続くと、**視力を失う「糖尿病網膜症」**や、足の壊死による切断など、生活の質を大きく損なう深刻な結果を招くことがあります。
現在、日本国内の糖尿病患者は約1000万人。糖尿病予備群を含めると2000万人以上ともいわれ、まさに「国民病」といえる状況です。
本記事では、糖尿病がどのように悪化して失明や足の切断に至るのか、そしてそれを防ぐための最新の医療的アプローチを詳しく解説します。
■ 糖尿病が悪化するメカニズム
糖尿病は、血糖(ブドウ糖)が体内でうまく処理されず、血液中に過剰に溜まってしまう病気です。
高血糖の状態が続くと、体中の毛細血管がじわじわと傷つき、酸素や栄養が細胞に行き渡らなくなります。
この「血管障害」が長期間続くことで、次のような三大合併症が発生します。
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糖尿病網膜症(目の合併症)
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糖尿病腎症(腎臓の合併症)
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糖尿病神経障害(末梢神経の障害)
これらは互いに関連し合い、失明・透析・足の切断という深刻な段階へと進行していくのです。
■ 糖尿病で「失明」する理由:網膜症の恐ろしさ
糖尿病網膜症は、高血糖によって網膜の毛細血管が破壊される病気です。
初期は自覚症状がほとんどなく、視界がかすむ、物が歪んで見えるといった症状が現れたときには、すでに進行しているケースが多く見られます。
● 網膜症の進行段階
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単純網膜症:血管が細くなり、小さな出血や白い斑点が現れる
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前増殖網膜症:血流障害が進み、網膜が酸欠状態になる
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増殖網膜症:新生血管が発生し、硝子体出血や網膜剥離を起こす
最終的には失明する可能性もあり、日本では成人の中途失明原因の第2位を占めています。
● 治療法と予防
レーザー光凝固術や硝子体手術が行われますが、最も重要なのは定期的な眼科検査です。
糖尿病を指摘されたら、最低でも年1回は眼底検査を受けるようにしましょう。
■ 糖尿病で「足を切断」する理由:神経障害と血流障害のダブルリスク
糖尿病神経障害が進むと、足先の感覚が鈍くなり、けがややけどに気づかないことがあります。
さらに、血管障害によって血流が悪化するため、傷が治りにくくなり、感染が広がりやすい状態に。
結果として、壊疽(えそ)と呼ばれる組織の壊死を起こし、最悪の場合は足の切断が必要になります。
日本では年間約1万人が糖尿病による下肢切断を余儀なくされており、社会的にも深刻な問題です。
● 足の異常を見逃さないために
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毎日、足の裏・指の間・かかとを確認する
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小さな傷でも早めに医療機関へ相談する
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きつい靴や裸足歩行を避ける
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定期的に足病専門医または糖尿病専門クリニックを受診する
■ 糖尿病悪化を防ぐための「4つの基本」
糖尿病による失明や足の切断を防ぐには、何よりも血糖コントロールが大切です。
医師の指導に従いながら、以下の4つのポイントを意識しましょう。
1. 食事療法
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炭水化物を摂りすぎない
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食物繊維を多く含む野菜や海藻を意識的に摂取
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間食・甘い飲み物は控える
2. 運動療法
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1日30分のウォーキングを目安に
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無理のない範囲で筋トレやストレッチも効果的
3. 薬物療法
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経口血糖降下薬やインスリン治療を医師の指示通りに継続
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定期的にHbA1c(ヘモグロビンA1c)の値を確認
4. 定期検査
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眼科・腎臓・神経などの合併症検査を半年〜1年ごとに
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足の血流や感覚も定期的にチェック
■ 最近注目される「早期診断」と「再生医療」の可能性
近年では、AIを用いた眼底画像診断や、血糖変動をリアルタイムに把握できる**持続血糖測定(CGM)**など、糖尿病管理の技術が大きく進化しています。
また、壊死した足組織に対して**再生医療(幹細胞治療)**を用いた血流改善治療の研究も進んでおり、従来よりも切断リスクを減らす可能性があります。
■ まとめ:失明も切断も「防げる合併症」
糖尿病は、放置すれば失明や足の切断など深刻な合併症を引き起こします。
しかし、定期的な検査・生活改善・早期治療を行うことで、多くの合併症は予防可能です。
見えなくなる前に、歩けなくなる前に──。
「血糖値をコントロールすること」は、未来の自分の体を守る行為です。
糖尿病と上手に向き合い、後悔のない生活を送るために、今日から一歩を踏み出しましょう。

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