私たちは「血糖値が高い=不健康」というイメージを持ちがちですが、実は見た目も健康で体調に問題がない人の中にも、血糖値が上がりやすい体質を持つ人が存在します。
いわゆる「隠れ高血糖体質」です。この記事では、なぜ健康体でも血糖値が上がりやすいのか? その体質の特徴・原因・対策を、最新の科学的知見を交えながらわかりやすく解説します。
1. 血糖値とは?そもそも「上がりやすい」とはどういうことか?
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度を意味します。食事をすると糖質が分解されて血液中に吸収され、血糖値は上昇します。
そして通常は、すい臓から分泌されるインスリンによって血中の糖が細胞へ取り込まれ、エネルギーとして使われることで血糖値は下がります。
しかし体質によっては、
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食後に血糖値が急上昇する
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血糖値が通常よりも長時間高く保たれる
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インスリンの働きが弱く、血糖が細胞に取り込まれにくい
といったケースがあり、結果的に「血糖値が上がりやすい」状態になります。
2. 健康体なのに血糖値が上がりやすい理由
見た目はスリムで健康そうでも、下記のような理由により血糖が上がりやすい体質の場合があります:
① 遺伝的なインスリン分泌量の少なさ
東アジア人(日本人を含む)は、欧米人と比較してインスリンの分泌能力がもともと低い傾向があることがわかっています。このため、食後の血糖値スパイクを起こしやすいとされています。
② インスリン抵抗性(細胞がインスリンの指示に鈍感)
筋肉や肝臓の細胞がインスリンの作用に対して反応が鈍くなる状態を「インスリン抵抗性」といいます。肥満でない人にも起こり得て、血糖が取り込まれにくくなります。
③ 筋肉量が少ない体質
筋肉は血中の糖を大量に消費する「最大の糖処理工場」です。筋肉量が少ない人は血糖を処理する能力が弱くなり、結果として血糖値が上がりやすくなります。
④ 胃腸の吸収スピードが速い
胃腸の働きが活発で糖質の吸収が速い人は、短時間で血糖値が急上昇しやすい傾向があります。
⑤ ストレス反応が強い
ストレスが加わるとアドレナリンやコルチゾールといったホルモンが分泌され、血糖値を上げる指示が出ます。ストレスに敏感な体質ほど血糖値が乱れやすくなります。
3. 自分は「血糖値が上がりやすい体質」かもしれない?チェックポイント
以下に当てはまる項目が多い人は、「隠れ高血糖体質」の可能性があります。
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食後に眠気やだるさ、集中力低下が強い
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脂肪は少なめだが筋肉量も少ない
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家族に糖尿病の人がいる
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ストレスを感じやすい性格
4. なぜ健康診断では見つからないのか?
一般的な健康診断では空腹時の血糖値を測定します。しかし、「隠れ高血糖体質」の人は、
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空腹時は正常
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食後だけ急上昇(血糖スパイク)
という状態になるため、検査では正常と判定されやすいのです。本来は、**食後1時間・2時間後の血糖値を測定する「OGTT(ブドウ糖負荷試験)」**などで評価するのが望ましいとされています。
5. 血糖値が上がりやすい体質の放置は危険?
血糖値が急激に上昇・下降を繰り返す状態を「血糖値スパイク」と呼びます。これを放置すると、
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動脈硬化(血管の老化)
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心筋梗塞・脳卒中リスクの上昇
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糖尿病への進行
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認知症・がんリスク増加
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肌の老化(糖化反応)
などの悪影響が指摘されています。つまり、身体は健康に見えても、血管は静かにダメージを受け続けている可能性があるということです。
6. 血糖値が上がりやすい体質の人が今すぐできる対策
① 食べる順番を意識「ベジファースト」
食物繊維→タンパク質→糖質の順で食べることで吸収速度をゆるやかにし、食後血糖の急上昇を抑えることができます。
② 糖質の摂り過ぎに注意
白米・パン・麺類・甘い飲料は血糖を上げやすい食品の代表。玄米・全粒粉パン・蕎麦など低GI食品に置き換えを。
③ 筋肉量アップ
スクワットや階段昇降、ウォーキングなど「下半身の筋肉」を鍛えることが糖の取り込みを改善させます。
④ 食後の軽い運動
食後30分以内に10〜15分歩くだけで、血糖値の上昇が抑えられます。
⑤ ストレス&睡眠を整える
睡眠不足・慢性ストレスは血糖値を上げるホルモンを増加させます。睡眠時間を確保し、リラックス習慣を持つことが重要です。
7. 医療機関で受けられる検査
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HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):過去1〜2ヶ月の平均血糖を反映
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食後血糖測定(自己測定機器)
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ブドウ糖負荷試験(OGTT)
気になる人は、かかりつけ医に相談し、これらの検査を受けてみることをおすすめします。
8. 体質は変えられる?血糖と遺伝の関係
たしかに、インスリン分泌力の強弱は「体質」として先天的にある程度決まっています。しかし、生活習慣によって大きく改善可能です。遺伝的要素があっても、食事・運動・睡眠などを整えることで、血糖コントロールは十分に可能です。
9. 健康体質でも油断せず「血糖」を意識する時代
今や、**糖尿病患者の約半数が“やせ型”**と言われる時代。「太っていないから自分は大丈夫」ではなく、「血糖が上がりやすい体質かどうか」が重要視されています。
とくに、30〜50代で生活は不規則・運動量少なめ・ストレス多めという人は要注意。身近な生活習慣を見直すだけで、将来の病気リスクを大幅に減らすことができます。
まとめ
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健康体でも「インスリン分泌の弱さ」や「筋肉量の少なさ」などにより、血糖値が上がりやすい体質の人は存在する。
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一般的な健康診断では見逃されやすく、放置すると血管の老化や糖尿病リスクにつながる可能性がある。
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食習慣・運動・睡眠・ストレス管理によって、体質は“改善可能”。
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自分の血糖体質を知り、早めの対策を始めることが、健康寿命を守るカギとなる。
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