糖質制限と脂質制限はどっちが脂肪を落とせるか。これに関しては米国立衛生研究所で実験が行われており、「糖質制限より脂質制限の方が体脂肪が減る」という結論が出ています。
この実験の条件は
〇肥満(BMI36以上)の男女19人を対象
〇初めの11日間を糖質制限食を、次の11日間を脂質制限食を食べてもらった
〇(糖質制限食も脂質制限食も共に)11日間のうち初めの5日間は炭水化物50%、脂肪35%、タンパク質15%の比率で食事を摂る
〇11日間のうち次の6日間は
糖質制限食は初めの5日間の炭水化物50%を炭水化物35%へ3割減らす
脂質制限食は初めの5日間の脂肪35%を脂肪24.5%へ3割減らす
そして、両方ともこの6日間は初めの5日間の食事よりカロリーを3割減らす。
結果は
〇体脂肪は、糖質制限食を食べた場合には1日に53g、脂質制限食を食べた場合には1日に89g減りました。
〇体重は糖質制限食を食べた場合には1.8キロ、脂質制限食を食べた場合には1.4キロ減りました。
つまり、体脂肪がより多く減ったのは脂質制限食、体重がより多く減ったのは糖質制限食です。一見引き分けのように見えますが、この実験を行った研究者は「糖質制限食の方がより多く体重が落ちた理由は水分の違いだけである」と言っています。つまり、糖質制限食の方が摂っている水分量が少ないので、その分体重が落ちていると言いたいようです。
最終的には脂質を制限した方が体脂肪が少なくなり、体重も減ると結論付けています。
この結論への疑問
私は「炭水化物の摂取量で成否が決まるダイエット」で説明した通り、脂質より炭水化物(糖質)を制限した方が体脂肪も減り、痩せると思っていました。いや、今でも炭水化物を減らした方が痩せると思っています。
この実験結果に納得していない理由は2つあり、一つ目はこの実験は11日間という限定であること。そして、初めの5日間は通常の食事で、後の6日間だけ糖質制限食と脂質制限食を食べさせているので、実質は6日だけの実験です。長期的にこれらの食事を食べた時にどう変化するのかが重要であって、短期の変動はその過程に過ぎません。
二つ目は実験の中の糖質制限食の炭水化物の比率が35%と高いこと。糖質制限食で糖尿病を治療している高雄病院の食事では炭水化物(正確には糖質)の割合は約12%です。これくらい糖質の比率が低いと食べ物から供給されるブドウ糖の量が足らなくなり、「脂肪」からケトン体(ブドウ糖の代替エネルギー)を産出するようになります(ケトン体はブドウ糖の代わりに脳などのエネルギー源になります)。
その結果、中性脂肪が消費されるので、その分脂肪が減るのです(参考記事「糖質制限の理解で必要なケトン体と糖新生とは」)。実際に糖質制限を実践している私の中性脂肪の数値は低いです。中性脂肪は30mg/dlから149mg/dlが基準ですが、私は46mg/dlです。
私は米国立衛生研究所の実験のように短期間ではなく、長期間糖質制限を実践しているので、私のデータの方がより信憑性が高いと思うのですが、いかがでしょうか。