糖質制限食を実践するにあたって、「本当に糖質を減らしても体に異変はないのか」と心配になるかと思います。しかし、糖質制限食はエビデンスの中でも最も信用力があるレベルで効果が実証されています。
エビデンスとは「科学的な根拠」を意味するのですが、ピンからキリまで様々あります。一番信用力があるのが無作為比較試験です。無作為比較試験は研究の対象者を集めた後に、それを無作為にいつくかのグループに分け、その中のあるグループには「効果を確認したい治療」を、もう一方には「他の比較対象の治療」を施します。
そして、それを比較した結果で、効果があるのか、ないのかを確認する方法が無作為比較試験です。ランダムに対象者を分けているため、研究者の恣意性を排除した研究結果を得られるので、最も信用がある研究成果です。
エビデンスの中で信用力が低いのが症例報告、専門家の意見、動物実験などです。例えば症例報告とは「高血圧薬を処方したら〇〇の副作用が出ました」という現場レベルの報告です。糖質制限食はこれらの症例報告レベルではなく、エビデンスレベルが一番高い無作為比較試験で効果が判明しています。
糖質制限食に否定的なエビデンスもあるのですが、「その論文がどのエビデンスレベルなのか」を確認することが大切です。
糖質制限食のエビデンス
では糖質制限食の実際のエビデンスを紹介します(無作為比較試験)。これはイスラエルで行われた試験ですが、太ったイスラエル人を300人集めて、それを100人ずつ3つのグループに分けました。
〇1つ目のグループは脂質を減らし、カロリーも減らすグループ1
〇2つ目のグループは脂質は減らさず、カロリーを減らすグループ2
〇3つ目が糖質を減らすが(1日に糖質を120g以下)、カロリーは制限しないグループ3
グループ1は従来のカロリー制限食と呼ばれているもので「高糖質低脂質食」です。
グループ2は地中海食と呼ばれているもので、オリーブオイルを多用する食事法です(地中海食については「地中海食が糖尿病、心臓病、認知症、乳癌を防ぐ」を参考に)。
グループ3は糖質だけを控える食事法で、一般的には糖質制限食と呼ばれています。
結果は一番痩せたのがグループ3で、二番目に痩せたのがグループ2で、一番痩せなかったのがグループ1でした。ダイエット効果はやはり、糖質制限食が一番効果が高いことが分かりました。グループ3は減量効果だけではなく、血糖値の改善、中性脂肪の減少、善玉コレステロールの増加にも1番効果が高かったです。
信用が高いエビデンスにより、カロリー制限食よりも糖質制限食の方が糖尿病に関しても効果が高いことが証明されているのに、日本の糖尿病学会は未だにカロリー制限食にこだわっています。
アメリカの糖尿病学会では既に糖質制限食を糖尿病の治療食として認めていますので、日本ももっと柔軟になってもいいのではないか。
糖尿病の合併症で失明や足の切断などが増えている現状で、なぜカロリー制限食しか選択肢がないのだろうかと残念に思います。患者にとってもカロリー制限食しか選択の余地がない訳ですので、気の毒です。
これから糖質制限食がもっと認知されてくれば日本の糖尿病学会も認めざるを得なくなるだろうと私は予想しています。