糖質制限食は一般の食事と比べてどれだけ多くの脂質を摂っているのか。一般の食事での三大栄養成分の比率は糖質60%、脂質25%、タンパク質15%です。それに対して糖質制限(スーパー糖質制限)では糖質12%、脂質56%、タンパク質32%です。一般の食事では半数以上が糖質、それに対して糖質制限では半数以上が脂質です。
一般的には動物性脂肪を摂りすぎるとコレステロールが血管に溜まって動脈硬化になりやすいと言われていますが、実際にはどうなのか。確かに少し前までの常識では正しいです。厚生労働省も食事により血中のコレステロールが増えると考えていたので、基準値を設定していました。
しかし、食事でコレステロールを多く摂っても血中のコレスロールは増えないことが分かったのです(つまり、因果関係はない)。その結果、コレステロールに関する基準は2015年に撤廃することになったのです。
実際に糖質制限をしている人のコレステロールの数値はどうなのか。糖質制限をするとHDLコレステロール(善玉コレステロール)が増えて、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が減ります。HDLコレステロールが増えてLDLコレステロールが減るということは動脈硬化になりにくいとされています。
これらのコレステロールについては「糖質制限の疑問①筋肉とコレステロールは増えるか減るか」で説明したので参考にしてください。
HDLコレステロールが少なく、LDLコレステロールと中性脂肪が増えすぎると動脈硬化のリスクが高まりますが、糖質制限を行うと中性脂肪が減って、HDLコレステロールが増えるので心筋梗塞を引き起こすリスクは少なくなります。
そして、もう一つの事実を紹介します。これは山田悟医師の「糖質制限の真実」という本に書いてありました。それは動物性の脂(飽和脂肪酸)と全循環器疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)の関係性です。そこには国立がん研究センターの以下のデータが載っていましたが、動物性の脂を多く摂る群と少ない群を比べて、前者の群の方が2割近く全循環器疾患の数が少ない結果が出ています。
脳卒中全体としては、飽和脂肪酸を最もたくさん摂取する群でリスクが最も低く、最も少ない群に比べて、発症リスクが23%低い結果となりました。
特に図1に示すように、脳出血の中でも日本人に多い、脳の奥深くにある細い血管(主に穿通枝動脈)から出血するタイプ(深部脳出血)では、飽和脂肪酸が多くなるにつれ、発症率が段階的に減少していく様子が見られました。
同じように脳梗塞の中でも日本人に多い、脳の奥深くにある細い血管がつまるタイプ(穿通枝脳梗塞)でも、飽和脂肪酸が多い群の方が、発症率が低い結果でした(図2)。このように、脳出血や脳梗塞を、さらに細かい分類に分けて飽和脂肪酸との関連をみた研究は、世界で初めてのものです。
脳卒中と心筋梗塞・急性死をあわせた全循環器疾患との関連では、飽和脂肪酸を最もたくさん摂取する群でリスクが最も低い結果であり、最も少ない群に比べて発症リスクが18%低下していました
ですので、糖質制限で肉の比率を多くしても世間で考えられているような「肉を食べると動脈硬化になりやすい」という因果関係はありません。もちろん、物には限度があり、野菜を全く食べないで肉だけ食べる人がいればそれは止めた方がいいです。栄養のバランスが悪くなるからです。上記のデータはこういう極端な食生活をしている人のデータではないのであしからず。